CPUの違いがゲーム体験に与える影響とは?3機種で快適度の違いを比較
PCゲームは、CPUで色々な計算を行って、その結果をグラフィックボードが描くことで1枚の画面が完成する。
だいぶ抽象的だが、下図のようなイメージだ。
このサイクルを1秒間で60回行えれば60fps(秒間60コマ)というわけだ。
CPUとGPUの性能が高いほどなめらかなゲーム画面になるが、消費電力量が増え、冷却ファンがうるさくなりがちという欠点もある。
そこで今回は、CPU性能が違う場合にパフォーマンスや快適度がどのくらい違うのかを見てみようと思う。
※本稿の内容は個人のテストによる計測値で、値を保証するものではありません。
Contents
今回利用するPCについて
今回は株式会社サードウェーブにお借りしたゲーミングPC「GALLERIA(ガレリア)」3機種を比較対象とする。
いずれもグラフィックボードにはGeForce RTX 4070 Tiを搭載している。個体差はあるがGPU条件は近いと考えて良いだろう。
CPUが違うと何が違う?
CPUが違うと以下の点に影響が出る。
- 演算性能 (ゲームの処理速度、なめらかさに影響)
- 消費電力
- 必要なCPUクーラーの冷却力
- CPUクーラーが発生する騒音の大きさ
近年のCPUは「コア」を多く積んでおり、多くコアを搭載するモデルほどCPUの消費電力が大きく、性能が高いのが一般的だ。
そして、多コアCPUは消費電力も大きくなりがちで、発生する熱も大きい。
そのため、GALLERIAにおいては高消費電力を許すCPUを搭載する場合、冷却力が高めの240mm簡易水冷クーラーなどを標準搭載する。しかし、複数のファンを搭載するので騒音はどうしても大きくなりがちだ。
対して、省エネモデルのCPUでは性能はやや控えめになるものの、1つの空冷ファンで冷却が間に合うので、比較的に静かに動かすことができるメリットがある。
スペックの違いとベンチマーク性能
PC | GALLERIA XA7C-R47T |
GALLERIA XA7R-R47T |
GALLERIA ZA7C-R47T |
特徴 | 省エネ・静音 | ほどほどの消費電力と 高いゲーム性能 |
CPUの総合力が高いが 消費電力も高い |
CPU | i7-13700F (16C/24T) |
Ryzen 7 7800X3D (8C/16T) |
i7-14700KF (20C/28T) |
CPUクーラー | 空冷120mmx1 | 簡易水冷240mm | 簡易水冷240mm |
CPUベースパワー | 65W | 125W | 125W |
CPUターボパワー | 219W | 162W | 253W |
Cinebench r23 (CPUマルチスレッド性能) |
20591 | 18262 | 34806 |
Cinebench r23 (CPUシングルスレッド性能) |
2030 | 1814 | 2196 |
搭載グラフィックボード | NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti 12GB | ||
TimeSpy (DX12 2560x1440での性能) |
20974 | 20571 | 21869 |
GALLERIA XA7C-R47T (i7-13700F搭載)
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:32GB DDR4
ストレージ:1TB(Gen3) NVMe SSD
1台目は、省エネタイプのCPUを搭載しているマシンだ。
「Intel Core i7-13700F」は、16コア24スレッドの65W動作CPUだ。性能が高いPコアと、効率重視のEコアという2種類のコアが組み合わされている。Intelはこれを「パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャー」と呼んでいる。
ゲームで特に重要になるPコアは8コア16スレッドとなっており、軽作業に向いた高効率のEコアが8コア8スレッドになる。どちらのコアを使うかをユーザーが意識する必要は基本的にはない。
GALLERIA XA7C-R47Tで搭載されるCPUクーラーは「静音パックまんぞくコース」という名前になっている。要は空冷120mmファンだ。
大径ファン1つの動作なので、他の2機種に比べると動作が静かである。ただ、限界性能は3機種の中では最も低い。
具体的には、一定時間は65Wを超える高い性能(&消費電力)を発揮できる。いわば100m走のようなシーンはそれなりに強い。
一方、長時間高負荷になると「持久走型」にシフトし、65Wにセーブした動作になる。
GALLERIA XA7R-R47T (Ryzen 7 7800X3D搭載)
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:16GB DDR4
ストレージ:1TB(Gen3) NVMe SSD
2台目はゲーム特化型のAMD製CPUを搭載しているマシン。
搭載される「AMD Ryzen 7 7800X3D」は、8コア16スレッドのみという古典的な構成ながら、3D V-Cacheのおがげで非常に高いゲーム性能を発揮する。
8コアCPUということでゲーム以外の性能は控えめな感じだが、65W動作の13700Fを超えるよう場合もあり、意外と何でもいけちゃう気もする。
CPUクーラーはASETEK製の240mm簡易水冷で、高い冷却性能を持っている。
GALLERIA ZA7C-R47T (i7-14700KF搭載)
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:32GB DDR5
ストレージ:1TB(Gen4) NVMe SSD
3台目はゲームもマルチスレッド処理も強い、オールマイティなIntel CPUを搭載している。
搭載される「Intel Core i7-14700KF」は、2023年秋に登場した最新世代CPU。13世代i7よりも4コアのEコアを増やして、マルチスレッド性能を高めた。
また、「K」つきモデルということで、電力制限が高めに設定されており、長時間高い能力を発揮できる。
コアが増え、動作クロックも高まったおかげで、限界動作時の消費電力が高い。
CPUクーラーはDEEPCOOL製 GAMMAX L240 V2。冷却性能はそこそこだが、光るので見栄えがいい。
これら3つのPC環境では何が違うのかを解説する。
1. CPUをよく使うゲームのなめらかさが違う
最初のパターンは、GPU(グラフィックボード)は余裕で、CPUの処理待ちになっている状態である。この状態は「CPUバウンド」と呼ばれる。
CPUバウンドになりやすいゲームはいくつか考えられる。
- VALORANTのようにグラフィックが軽量なゲーム
- Cities: Skylines IIのようにシミュレーションでCPUをヘビーに使うゲーム
- 黒い砂漠のように、扱うデータが多いMMORPGゲーム
【VALORANT】 最高設定 平均フレームレート
VALORANTは非常に軽量なので、CPUバウンドといえども、省エネタイプの13700Fで十分なフレームレートを出すことができている。
しかしながら、7800X3Dはちょっと比較にならないレベルで高いフレームレートを出している。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 497fps | 782fps | 582fps |
2560x1440 | 496fps | 766fps | 591fps |
3840x2160 | 443fps | 484fps | 476fps |
【Cities: Skylines II】13万人都市 平均フレームレート
都市育成ゲームのCities: Skylines IIでは、人口13万人の都市の動作をテストした。
グラフィック設定を最低にして、シミュレーション速度を最速にした際にどのくらいのフレームレートが出せるかをチェックしている。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 34fps | 69fps | 71fps |
2560x1440 | 31fps | 67fps | 70fps |
3840x2160 | 32fps | 67fps | 70fps |
ここではCPU性能が一番低い13700F搭載機が、他2機種の半分くらいしか出ていないことがわかる。
アップデートで今後改善される可能性はあるが、現状ではCPUの能力差がかなり出やすいタイトルのひとつだ。
【黒い砂漠】 リマスターモード エルビアサウニール狩り 平均フレームレート
こちらは手動計測なので誤差は小さくない点は先にお断りしておく。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 174fps | 208fps | 184fps |
2560x1440 | 151fps | 160fps | 156fps |
3840x2160 | 76fps | 77fps | 75fps |
黒い砂漠はMMORPGとして、CPUバウンドになるシーンが多い。大人数のボス戦闘やPvPなどで固まらずに動けるかはCPUパワーにかかっている。
4Kになるとグラボ限界になるため変わらないが、それより低い解像度、特に1920x1080ではCPUによって能力差が出やすい。
2. グラボが限界になりやすい超画質ゲームはあまり変わらない
次は「グラフィックが凄いゲーム」の動作時だ。グラフィックボードが手一杯な状態になりやすい。
この場合はCPUはまだ余力がある場合も多いので、CPUが違ってもあまりフレームレートは変わらなかったりする。
【サイバーパンク2077】 RT:オーバードライブ 平均フレームレート
サイバーパンク2077の最高画質設定「RT:オーバードライブ」設定での例。
1920x1080で最大8fpsほどの差が出ているが、ゲームプレイで違いを実感できるレベルではない。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 127fps | 128fps | 135fps |
2560x1440 | 102fps | 98fps | 104fps |
3840x2160 | 64fps | 65fps | 65fps |
【ARK: Survival Ascended】最高プリセット 平均フレームレート
Unreal Engine 5を採用したARK: Survival Ascendedでは、最高プリセットでDLSS パフォーマンス+フレーム生成をオンにしてテスト。
いずれの解像度でもRTX 4070 Tiを使い切り、CPUの差はほぼない。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 90fps | 90fps | 91fps |
2560x1440 | 72fps | 72fps | 74fps |
3840x2160 | 44fps | 47fps | 47fps |
3. 高フレームレートがあまり意味がないゲームもある
ゲームジャンルによっては必要以上に高フレームレートが出ている必要がないものもある。
【バルダーズ・ゲート3】 ウルトラプリセット 平均フレームレート
ターン制RPGのバルダーズ・ゲート3の場合、60fps出ていればゲーム体験としては十分だ。
Blighted Villageで行ったテストでは、どのマシンも4K(3840x2160)まで快適にプレイできる印象だった。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
1920x1080 | 111fps | 183fps | 136fps |
2560x1440 | 111fps | 151fps | 139fps |
3840x2160 | 89fps | 85fps | 89fps |
4. 動画編集能力の差
動画編集においては、Adobe Premiere Proがよく使われる。
このソフトはCPUもGPUも両方使う初期設定になっていて、CPUとGPUの両方の性能から書き出し速度が決まる。
【Adobe Premire Pro】4K60fps 10分の映像をYouTube用にエンコード時の所要時間
4K(3840x2160)解像度で60fpsで撮影したゲーム映像を、YouTube用の2160pプリセット(H.264)でエンコードした際の所要時間を比較した。
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
処理時間 | 342秒 | 308秒 | 249秒 |
CPUにより明確な差が出ていることがわかる。やはりマルチスレッド性能が最も高いi7-14700KFが最も速い。
13700Fと7800X3Dでは、Cinebench r23のマルチスレッド性能は13700Fの方が高かったものの、Premiere Proでのエンコードは7800X3Dの方が優れていた。
5. 画像生成AIの差
画像生成AIにおいては、生成部分においてはGPU性能が重要だが、CPUで処理する部分もあるため、CPU性能によっても処理速度に明確な差が出る。
Stable Diffusion Web UI 1024x1024(Hires.Fix) 10枚出力の所要時間
GALLERIA XA7C-R47T (13700F) |
GALLERIA XA7R-R47T (7800X3D) |
GALLERIA ZA7C-R47T (14700KF) |
|
処理時間 | 201.7秒 | 171秒 | 136.95秒 |
6. 電気代の差
冒頭のリストでも軽く触れたが、CPUによって必要な電力が違う。
このため、ゲームプレイ中のシステムの消費電力も結構違う。
i7-13700F搭載機はベースパワーこそ65Wだが、短時間の動作では219Wを許容する。このため、消費電力の幅が結構広い。
7800X3D搭載機はCPUの搭載コアが少ないこともあり、高負荷時の消費電力もやや抑えめ。電力制御も厳し目にしてある感じがした。
i7-14700KF搭載機は「とにかく全力」な設定で、高負荷時は瞬間的に500Wを超える消費電力となった。
PC | GALLERIA XA7C-R47T |
GALLERIA XA7R-R47T |
GALLERIA ZA7C-R47T |
CPU | i7-13700F (16C/24T) |
Ryzen 7 7800X3D (8C/16T) |
i7-14700KF (20C/28T) |
CPUベースパワー | 65W | 125W | 125W |
CPUターボパワー | 219W | 162W | 253W |
システム全体のゲーム中消費電力(目安) | 395W | 359W | 510W |
7. 動作音の差
消費電力が増えるに伴い、発熱量も増える。
発熱量が増えるほど、熱を逃がすために大型あるいは複数のファンを必要とする。
特に複数ファンになるほどうるさい、というわけだ。
7800X3D搭載機、14700KF搭載機は240mm簡易水冷で、120mmファンを2基搭載する。
GALLERIA XA7C-R47Tに搭載された13700Fは、CPUファンは120mm空冷1基だ。
このため、動作音は他2機種と比べると静かだ。
PC | GALLERIA XA7C-R47T |
GALLERIA XA7R-R47T |
GALLERIA ZA7C-R47T |
CPU | i7-13700F (16C/24T) |
Ryzen 7 7800X3D (8C/16T) |
i7-14700KF (20C/28T) |
CPUベースパワー | 65W | 125W | 125W |
CPUターボパワー | 219W | 162W | 253W |
CPUファン | 空冷 (120mmx1) |
簡易水冷240mm (120mmx2) |
簡易水冷240mm (120mmx2) |
CPUベンチ時 | 41dbA | 46.4dbA | 49.3dbA |
ゲーム時 | 40.5dbA | 42.1dbA | 47.1dbA |
8. まとめ
【Ryzen 7 7800X3D搭載機】ゲーム用途に不満なし。マルチスレッドタスクも悪くない
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:16GB DDR4
ストレージ:1TB(Gen3) NVMe SSD
Ryzen 7 7800X3Dが、ゲーム用途では省エネかつワットパフォーマンスも良く、優秀なCPUだと言える。
ゲーム以外でも、マルチスレッド性能を問われるPremiere Proで、65W動作の13700F以上の処理速度を見せるなど、一般的なゲーマーはこれでいいのでは?と思う。
CPUクーラーについては、標準でASETEK製の240mm簡易水冷クーラーがついている。
これは水冷ヘッド部やファンが光らないので地味だけど、冷却性能は十分だった。
ヘッド部が光る方が良い方は、LS520にしてもいいと思う。
【i7-14700KF搭載機】オールラウンドに強いが電気食い
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:32GB DDR5
ストレージ:1TB(Gen4) NVMe SSD
Core i7-14700KFについては、CPUのコア数(Eコア)が増えたこともあり、強力なCPUに仕上がっていた。
ゲームだけでなく、CPUを使うタスクにもどんどん使っていきたい人におすすめである。
CPUバウンドなCities: Skylines IIも安定していたし、Adobe Premire Proでの動画編集や、Stable Diffusionでの画像処理など、何を任せても大丈夫な印象だ。
その分、高い電力を消費することや、簡易水冷のファンによるノイズが大きく感じられた点はマイナスポイントである。
これはテスト機の標準搭載クーラーがちょっと非力なせいもあるかもしれない。
カスタムで上位クーラーにしつつ、ファンコントロールなどでファンノイズを調整すると良いと思う。
【i7-13700F搭載機】静かな動作を求める場合に満足度が高い
GPU:RTX 4070 Ti 12GB
メモリ:32GB DDR4
ストレージ:1TB(Gen3) NVMe SSD
ゲーム中の静音性を求めるユーザーには、13700F搭載機は良い選択肢だと言える。
CPU性能は上記2機に比べると劣るものの、Cities: Skylines IIを含め、最新ゲームが問題なく遊べる能力を持っている。
空冷ファンはパーツがシンプルで、メンテナンスがしやすいのもメリットだ。
このPCもカスタムで簡易水冷CPUクーラーが選べるが、空冷だから静かなのだということは忘れてはいけない。
基本的に65W動作ならカスタムは不要。もし自前でちょっといじって65W以上の動作にしたい、という方は、虎徹 Mark3あたりにするのがいいかも。
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